イクメンな彼氏

いつの間にか公園で蝉の脱け殻は見つからなくなり、日射しの強さは和らいできた。

室温調節が難しい季節のためか、冷えすぎた店内でカーディガンを羽織りながら注文を終える。

日当たりのいい外階段では汗が吹き出してくるけれど、二階のドアを開けるとまたひんやりとした風が身体を覆う。

「あーーっあっ!!」
「しー、静かに……」

いつもの席では十ヶ月を過ぎた悠理花ちゃんが、人差し指を唇に当てた中津さんとじゃれあっている。

季節が変わっても、私と彼らは毎日のようにここで顔を合わせていた。

「おはようございます」

「おはよう、明日は運動会だね。
子どもたちの準備は万端?」

ダークグリーンのスーツにヨーグルトをつけられた中津さんが苦笑いしながらも、可愛くて仕方がないという目で悠理花ちゃんを見つめている。

悠理花ちゃんに髪を引っ張られたり指を噛まれたり、毎日大変なのにいつも嫌な顔一つしない。

この笑顔が好きだな……と思う。
私に兄弟はいないけれど、もしも兄がいたらこんな感じなんだろうか。
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