イクメンな彼氏
「本当によかった」呟くと勝手に笑顔になる。後片付けは大変だけれど、達成感で胸がいっぱいで疲れは感じていなかった。

初めての運動会委員は不安だったけれど、子どもたちのやる気と元気に力をもらって私が成長させてもらった。

そして、中津さんの励ましに勇気をもらった。

「お疲れ様。縦割り好評だったね」

声に振り返ると明るい笑顔で藤本さんがこちらを見ている。

「あ……ありがとうございます」つい身構えてしまうものの、藤本さんと話をすることにも随分慣れた。

「小学校のPTAもしている年中の川中 光くんのお母さんわかる?」

「あっ、はい。色々とクレームの多い方ですよね……」

気の強そうな化粧の濃い保護者の顔を思い出す。
気に入らないことがあると園長を呼び出せと言ったり、区役所にクレーム相談に行ったりすることが過去にはあったらしい。

「あの人が年長クラスの種目を減らすように言ってたんだ。年中クラスの担任の俺は散々クレーム対応してきたから、もう嫌になっててね。

君と運動会委員になった時は投げやりな気持ちだったんだ」

誰だって面倒なことは避けたい。
クレーム対応の為川中さんの言う通りにしようと思う気持ちは当然のことだと思う。

私ならただおろおろするだけで、クレーム対応なんて出来なかっただろう。
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