イクメンな彼氏
「疲れた? 今日は付き合わせてごめんね」
中津さんの言葉に首を振る。

「そんな、すごく楽しいです」
「よかった。今日の神崎さん、いつもよりよく喋るね。動物が好きなの?」

私がよく喋る……?
中津さんの言葉に動揺して視線が宙を泳ぐ。

きっとうるさいと思われていたんだ。
お前は黙っていろっていつも言われていたのに、つい楽しくて忘れていた。

「ごめんなさい。
つまらない話ばかり聞かせて」

項垂れて謝ると「そんなつもりじゃないんだ。もっと聞きたいなと思って」微笑んで否定してくれる中津さん。

本当にそう思ってくれているの……?

葉月にはよくお喋りだって言われる。
でも他に思っていることを喋れる人なんていなくて、周りの人にはいつも無口だと言われてきた。

もうずっと、長い間。

中津さんと一緒にいると、ありのままの自分が顔を出してしまう。

目立たないよう、人に嫌われないよう周りの人のことばかりを気にしてきた自分を忘れて。

忘れてもいいの……?
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