イクメンな彼氏
「ふぁっふぁっ、んぎゃーっ」

突然の泣き声にベビーカーの帆を開けると、唇を八の字にして泣いている悠理花ちゃん。

「起きたのかー、よしよし」
中津さんが抱き上げるとぴたりと泣き止み、「ぷぅーっ」と彼に手を伸ばしていく。

私な考えごとを中断して悠理花ちゃんのごはんの準備をする。

「アレルギーはないって言ってましたよね?卵や肉は使ってないんですけど」

少し不安だったけれど、離乳食について散々調べた甲斐があって、悠理花ちゃんも大きな口を開けて完食してくれた。

お昼からはコアラをゆっくりと眺めたり、気持ちよさそうに水の中を泳ぐアシカのエサやりを見学したり、何だかホッとする時間だった。

だけど気温は十月とは思えないほどに右肩上がりで、冷たい食べ物が恋しくなってくる。

「ソフトクリームか、いいね」という中津さんの声に目を向けると、ジュースとソフトクリームの絵が描いてある旗が目に入る。

売店には長蛇の列……だけど「私並んで来ます。中津さんは悠理花ちゃんをみてて下さい」私は駆け出していた。

何か言いたげな中津さんから目を逸らして列に並ぶと、後ろにはすぐに列が続いていく。

バニラとチョコレートか。
中津さんに何味が好きなのか聞くの忘れちゃったな。
一つずつ買って行けばいいか。

ぼんやりと看板を見ていると後ろの女の子達の会話が耳に入ってきた。
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