イクメンな彼氏
私の頭の中には、さっきの女の子たちの会話がぐるぐる回る。

私……私は嘘つきだ。

一度気付いてしまったらもう否定は出来なかった。

恋愛感情がないなんて嘘だ。
本当は運動会のことで相談した時から……ううん、もっと前からかも知れない。

私は中津さんが好きだったんだ。

胸が弾む意味も、ドキドキする理由も、いつも気付かないふりをしてた。

中津さんには悠理花ちゃんと奥さんがいるのに、好きだって気付いたらもう会えなくなると思って、ずっと自分に嘘をついてたんだ。

あの頃と同じで、流されるままで……。

いつの間にかカウンターまでたどり着いていた私は、忙しくても笑顔を忘れないおばさんにソフトクリームを注文する。

受け取ったソフトクリームは見本みたいに綺麗に巻かれていたけれど、私はもう美味しそうだとは思えなくなっていた。

このソフトクリームを食べ終わったら、夢の時間はおしまい。

中津さんとは……もう会えない。
会っちゃいけないんだ。
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