イクメンな彼氏
「ありがとう……」
申し訳なさそうに伏せられた黒い睫毛から目を逸らして、私は自分の席に戻る。

もうちょっとゆっくりしているつもりだったけど、早くカフェラテを飲んで出よう。
気まずい思いで砂糖の袋を開けると、また横から声が聞こえてくる。

「あぁっ、ほら、ゆりか、だめだろ」
「あっ、あっ」


テーブルに掴まって立とうとする赤ちゃんを阻止できない彼は、きっと何時間経過しても昼食が終わらないだろうな。

私はため息を一つついて、立ち上がった。
「お食事の間だけ、抱っこしていましょうか?これでも私、保育士なんです。ご心配かと思いますが、あなたの目の届くところに必ずいますから」

「保育士さん?」
怪訝そうな顔でこちらを見た後、表情が緩んで目尻が下がる。
「すいません。こういうの初めてで、困っていたんです。お言葉に甘えさせてもらってもよろしいですか?」
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