イクメンな彼氏
「今日も残るの?
神崎さん、無理しすぎてない?」

夕方空いたクラスに残って電子ピアノの前に座るとドアが開いて、後ろのドアが開いて藤本さんが現れた。

運動会の打ち合わせ以来食事に行くことはないけれど、こうして時々私のことを気にかけてくれている。

「大丈夫です。
少し練習して帰るだけですから」

軽く会釈してピアノに向き直ると、ゆっくりと藤本さんが隣にやって来た。

「これ、有名なアニメの曲だね。
かなり難しい曲だけど、ピアノで弾くの?」

……正直難しすぎる曲だ。

小さな頃からピアノを習ってきた人たちと違って、保育士になりたいと思ってからピアノを習い始めた私には特に。

だけどどうしても、子どもたちが選んだこの曲を弾いてみたい。
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