イクメンな彼氏
「お待たせ。行こうか」
寒さに首をすくめながら藤本さんと保育園のドアを閉める。
日が落ちるのが早い季節になって、全ての電灯を消すと園庭も暗闇に包まれる。

今日はクリスマス会の後の預かりはないから、戸締まりを確認して私達が最後だ。

門の鍵をかけて歩き出そうとすると、突然藤本さんに左手を握られた。

「え……?」
いわゆる恋人繋ぎではないもののそれは明らかに手を繋ぐという行為で、私の頭の中は真っ白になる。

どうして……?

とっさに手を引こうとしたけれど強く握られて離れず、背中に恐怖が這い上がっていく。

「嫌っ」と振り払おうとした時、視界に入ってきたのは目を疑う人物で、私は振り払うことも忘れて固まってしまった。
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