イクメンな彼氏
「お母さんのことはいいの。ゆっくりしてきてね」

「うん……また、後でね」

クリスマスイブに私が独りで寂しい思いをしてると思って来てくれたんだ。 いつも突然だけど、私のことを思ってくれるお母さん。

でも中津さんとの大切な約束だし、仕方ないよね。お土産を買って、今日は少し早く帰らせてもらおう。

「騒がしくてすいません」

彼の方に向き直ると、「ちょっとごめんね」と彼は立ち上がり、そのまま入り口の方へ歩いていく。

お手洗いかな?

ぼんやりと口をつけるタイミングを逃したシャンパンの泡を見つめていると、戻ってきた中津さんに「行こうか、比奈」と手を引かれた。

「行くって、どこへですか?」

今から食事だというのにわけがわからず尋ねたのに、答えずに机の上に置いていたスマホを握らされる。

「比奈の家でパーティーか。楽しみだね。早くお母さんに連絡して」

「え?」

「ケーキはあるのかな。ワインでも買って行こうか」

「あの、中津さん、せっかくお店予約して下さったのに……」

言いかける私を急かすようにコートを広げて腕を引っ張り袖を通させる。

「次のカップルが待っているから、早く出よう」
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