イクメンな彼氏
小さなテーブルに目一杯の料理を並べる。
料理をするために広いキッチンの部屋をんだものの、お客さんなんてほとんど来ないからお皿が足りずに紙皿に紙コップ。

それでもやっぱりデパ地下のお惣菜は美味しいね、なんて言いながらちょっと奮発したワインに舌づつみを打つ。

一応旅館の女将のお母さんは、始めこそ緊張していたもののだんだん饒舌になって、中津さんに私の小さな頃の話なんかをし始めた。

もう……お母さんってば、すっかりご機嫌になっちゃって。
アイドルの真似して踊ってた話なんて恥ずかしいよ。

だけどこんなにも楽しそうなお母さんを目にするのは久々で、今日は大目にみることにする。

中津さんはというと相変わらず私に優しくて、お母さんにもよく喋り、楽しそうにしてくれているように……見えた。

「このオードブルにして正解でしたね」

サーモンのマリネとカラービーンズのサラダ、トマトとモツァレラチーズのカプレーゼは本当に美味しくて、中津さんに声をかける。

「そうだね。
でも海老のサラダも美味しそうだったね」

中津さんがにやりと含みのある表情で返してきた。私は苦笑いしてさっきのデパ地下でのやりとりを思い出す 。
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