イクメンな彼氏
……な、中津さんと悠理花ちゃん……。

鼓動が早くなって声が上擦りそうになるのを必死で堪えて、何ごともなかったかのように手遊びを始める。

中津さんってば、何考えてるの?
すごく緊張してきちゃうよ……。

手遊びを終えて入園の説明を進め、最後は個別での聞き取りとなる。

他の先生も手伝いに来てくれて、順番に呼び出してアレルギーや普段の生活について話を聞いていく。

受付順なので最後は中津さんと悠理花ちゃんとなり、私は二人を呼んだ。

「大変お待たせ致しました。安藤悠理花ちゃーん」

……アンドウユリカ?

書類に記載された名前に一瞬首を傾げるる。「ありがとうございました」と挨拶して帰っていく入園児たちに気をとられていると、目の前に中津さんと悠理花ちゃんがやって来た。

広い集会室は、さっきまでの騒がしさとうってかわって静まりかえり、残っているのは三人だけだ。

「……中津さん、どうして言ってくれなかったんですか?」

聞き取りの為に低いテーブルの向こう側に座った中津さんに、私は唇を尖らせる。

ダークブルーのスーツで悠理花ちゃんを抱っこした中津さんは涼しい顔をして、「比奈の仕事っぷりが見たかったんだ」なんて甘い笑顔を向けてくる。

悠理花ちゃんがうちの保育園に入園するなんて全く聞いていかったから本当に驚いた。

「今日来るって言っていてくれたら、こんなに緊張しないで済んだのに……」
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