タクティスに染まる頃
「か…彼女を乗せてやれよ」

震えを我慢して,声を出した。
チラッと蘭と里子の方を見ると,ニヤニヤしながらこっちを見ていた。

あ~も~

「ンじゃ…」

早く離れたかった。

「待てよ」

背を向けたあたしの体が,低く,かすれた俊貴の声に反応して止まった。

「ほら…行くぞ」

止まってしまったあたしを,勝ち誇った顔で掴まれた手。
強引に引っ張って歩く,こいつの背中を見ながら,バイクに向かって歩いた。
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