タクティスに染まる頃
靴を脱ぎ,自分の部屋へ静かに歩く。

「裕人さんッ…あッ…」

母さんの部屋から聞えた声に,足が止まった。

「奈々子さん…」

奈々子とは,母さんの名前。

「あン…はぅ…あぁぁ…」

もう…やだ…。
あたしは,玄関へと走った。

早く,この家から出たい…やだ…。

その時,母さんの靴と男の靴が目に入った。
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