恋愛温度差
 大人な対応に、私の胸がドキドキしてしまう。

 黒崎さんのこういうスマートな動きが、格好よすぎて夢中になってしまう。

 彼女になりたいな、と思う。でも告白はしたことない。

 いつでも黒崎さんのとなりには、綺麗な女性がいるから。

 どうせ振られるなら、告白しないで遠くから見ているほうがいい。

 黒崎さんの親友の妹という位置で可愛がってもらえてるだけでいい。

「鍋でいいですか?」

「え!?」と私は隣に立っている君野くんを見上げた。

「鍋です」

「あ、ああ。夕食の話し? いいよ」

「駅前に居酒屋があるんですけど、そこに美味しい鍋料理があるそうです」

「食べたことないの?」

「はい。行ったことない店をリサーチして、食べに行くのも課題のうちですから。いつも行く店には行くなと言われています」

「ああ、そうなんだあ」

「はい。そうなんです」

 こっちです、と君野くんが歩き出した。

 長身の君野くんに歩幅をとても大きい。

 私はサクサクと進んで行く君野くんの後ろを小走りで追いかけた。
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