恋愛温度差
「鍋……食べるんだぁ」

「は?」と君野くんが首をかしげた。

「え、ああ。お兄ちゃんからお昼にケーキを食べて、おやつに激辛ラーメンで、夕食はフルーツタルトって聞いてたから。鍋料理、食べるんだなあって」

「勉強のために食べ始めたのがきっかけです」

「なにが……ですか?」

「だからお昼にケーキで、夜がタルトを食べている理由です。黒崎オーナーが作りだすものはすべて完ぺきだから。その技を知りたくて」

「勉強熱心ですね」

「姫宮さんは? どうして黒崎さんを好きなんですか?」

「はあ!?」

 私は箸で掴んでいた肉を思わず、テーブルに落としてしまう。

 なんで、知ってんの?

「見ていればわかります。好きですよね?」

「そ……そうですねえ」

 頬が蒸気する。

 さっきまで冷えていた身体が一気に熱をおびて、汗がどっと噴き出してきた。

「見る限りでは一日、二日で好きなったわけじゃなさそうですけど。なんで告白しないんですか?」

「……えっと、告白ですか?」

「何年も好き、って感じに見えましたけど」

「君野くんだったら告白しますか?」

「俺が、黒崎オーナーに?」

「ちがいます。好きな人ができたら、遠くで見ているだけではなくて、告白するんですか?」

「好きだらこそ、告白ってするんじゃないんですか?」

 たしかに。その通りだけど。

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