恋愛温度差
「怖いとか、ないんですか?」

「好きなのに、怖いってなんですか?」

「振られたらどうしようっていう感情です」

「ないです。好きだから、好きと言うだけですから」

「そう……ですか」

 根本的に、君野くんと私は考え方がちがうみたい。

 ここはぐいっとお酒を飲んで、鍋をたいらげて、さっさと課題をクリアするだけ。





「ずーーーっと、黒崎さんには恋人がいるんだよねえ。一人ひとりの付き合ってる期間は短いけど、すぐに次ができるの。私の入る隙間なんかなくて。いっつもどの女性も、キレイで聡明で……勝ち目なんて全然なくて。なんか、もうホント完敗ってかんじ」

 アルコールが身体中をかけめぐり、いつも以上に饒舌になる私。

 気がつけば、君野くんはずっと黙って頬杖をついて聞いてくれている。

 それも、至極つまらなそうに。

 なにか、新しい話題を振ってくれないだろうか。

 ただじっと聞かれているのも苦痛だ。

 どうしたらいいんだろう。

「そんなに好きなら、なんでさっさと告白しないんです? ダラダラと想いを引き摺って、人生勿体ないとか思いませんか?」

「え?」

 やっと口を開いたかと思えば、君野くんの言葉がぐさりと胸に突き刺さった。

 つかれたくない個所を狙って、ピンポイントで刺してきた。
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