恋愛温度差

「……で、何て言われたんです？」
「はい？？？」
「オーナーに、です」
「『あかりちゃんが、あかりちゃんだとわかっているから、あいつもそう躊躇ったりしないのかな？と。あかりちゃんが『オンナ』だとわかれば、あいつもそれなりに見方がかわるんじゃないかと』と言われましたっ！」
「『オンナ』ねえ」と、君野くんが含みのある言い方をして、わたしのワンピース姿を舐めるように眺めた。

「どうせ、おかしな格好ですから！　似合ってないのはわかってます」

　くすくすと君野くんは失笑しながら、自転車を押して、「さて、行きましょう」と課題クリアのための食事会へと移動した。








　親指、小指、かかと、足の甲に貼られた絆創膏を見つめたまま、足の指先を動かしてみた。

　慣れない服装に、履き慣れてない靴、とってつけたような急場しのぎの格好は、心も足も痛くなると勉強になった。

「これで課題クリアですかね」と、君野くんが缶酎ハイをテーブルに置きながら口を開いた。

　わたしは体育座りのまま、首をたらすと膝に額をくっつけた。

「夕食を共にして、女が男の部屋にあがるっていうのは客観的に見て、『デート』ですよね」
「『課題』でなければ、『デート』だと思います」

　わたしは頭を垂れたまま、返答する。

　わたしは今、君野くんの一人暮らしの部屋にお邪魔している。
　慣れないヒールの靴で、両足のあちこちに靴擦れができてしまった。