恋愛温度差
「まあ、好きだからこそ我慢できた痛みだよねえ」
「え? 痛み!?」
好きだからこそ、我慢できる痛み!?
ボンッとわたしの体が沸騰するかのように熱く火照る。
「ん? だから靴擦れ。好きな人と一緒にいるからこそ、我慢できる痛み。痛いって言ってデートが中断されるのも嫌だし、嫌われても嫌だし……って、あれ? あかりちゃん、顔赤いよ?」
「え? ああ、昨日の靴擦れの痛みを思い出したら……。慣れない靴は履くもんじゃないですよねえ。いくら、黒崎さんのお願いだったからって……。わたしには、ヒールは似合わないですよねえ」
あはは、と乾いた笑いをあげて、わたしは厨房のさらに奥にある従業員用の更衣室があるロッカーに向かった。
「あ……アンバランス過ぎる」
更衣室にある全身用の鏡を見て、わたしはがっくりと肩を落とした。
キレイ系の服に、男物のサンダルが不釣り合い。
そもそもワンピースがわたしに似合ってないんだ。
ジーパンに白いシャツが定番の私。スニーカーは、長時間立ち仕事の私には、切ってもきれない大切な相棒だ。
でも……。同じように店の売り子として働いてる茂美さんは、わたしとは真逆の格好で仕事をしている。
仕事中でもヒールを履いてるし、スカート率は高め。
黒崎さんが『オンナ』として認めているようなワンピースにカーディガンは茂美さんも良く着ている。
やっぱり『オンナ』はそうあるべき、なのか?
わたしはそうじゃないから、いつまでたっても売れ残りなのか……。
「やっぱ私は『オンナ』じゃないのか……」
「そう落ち込むな、妹よ。旺志から見たら、お前はババアだからなあ。いくら、部屋にお持ち帰りしたって、手は出さねえよ」
「はあ!?」
わたしは鏡にうつったお兄ちゃんを目で確認すると、目を吊り上げて振り返った。
「俺と茂美は同級生だったから、事故的なアレは衝動的にあったが……。お前と旺志じゃなあ、9歳差だろ? しかも女のほうが30過ぎじゃなあ…」
「事故的なアレって……茂美さんに失礼じゃない!」
「俺たちのは例えだろ、それに結婚したんだからいいんだよ。30過ぎの処女じゃあ、うっかり事故で済まされないだろ。十代二十代なら、『遊び』『その場の勢い』『流れ』で終わりにできることが、30代オトメじゃあ次を期待されるのは目に見えてっからな。重いだけだろ。よくある男の一人暮らしアルアルは、お前には通用しない……と頭の片隅においておけ」
「ちょ……」
「何もされなかったからって、しょげるなって言ってんだよ、俺は」
「なんで何もなかったってわかるのよ!」
何もされない前提話しているお兄ちゃんのほうが失礼だっての!
何かあったと思いこまれて、話されるのも嫌だけど……。
「何もなかったんだろ?」
「うるさいなあ~」
「旺志の容姿なら、女なんて選り取り見取りだろ。売れ残りババアをどうしても罠にかけてまで、寝取る必要なんてないしなあ……って」
「ひどっ……!! カワイイ妹を、売れ残りババアっていう!?」
「事実だろうが。てか、どの口が『かわいい妹』って言ってんだ? どこがカワイイんだ?ええ? どのへん?? 平凡人並平均なお顔なのに、化粧っ気もなくジーパンTシャツじゃあ、婚期を逃せば、男運も逃げてくっての~。そういう格好はな、結婚して子供産んでからでいいんだよ」
「さいってえぇ~~!!」
最低、最低、ちょー最低。
お兄ちゃんは、「ははは」と声高らかに笑い声をあげて、更衣室を出ていった。
「え? 痛み!?」
好きだからこそ、我慢できる痛み!?
ボンッとわたしの体が沸騰するかのように熱く火照る。
「ん? だから靴擦れ。好きな人と一緒にいるからこそ、我慢できる痛み。痛いって言ってデートが中断されるのも嫌だし、嫌われても嫌だし……って、あれ? あかりちゃん、顔赤いよ?」
「え? ああ、昨日の靴擦れの痛みを思い出したら……。慣れない靴は履くもんじゃないですよねえ。いくら、黒崎さんのお願いだったからって……。わたしには、ヒールは似合わないですよねえ」
あはは、と乾いた笑いをあげて、わたしは厨房のさらに奥にある従業員用の更衣室があるロッカーに向かった。
「あ……アンバランス過ぎる」
更衣室にある全身用の鏡を見て、わたしはがっくりと肩を落とした。
キレイ系の服に、男物のサンダルが不釣り合い。
そもそもワンピースがわたしに似合ってないんだ。
ジーパンに白いシャツが定番の私。スニーカーは、長時間立ち仕事の私には、切ってもきれない大切な相棒だ。
でも……。同じように店の売り子として働いてる茂美さんは、わたしとは真逆の格好で仕事をしている。
仕事中でもヒールを履いてるし、スカート率は高め。
黒崎さんが『オンナ』として認めているようなワンピースにカーディガンは茂美さんも良く着ている。
やっぱり『オンナ』はそうあるべき、なのか?
わたしはそうじゃないから、いつまでたっても売れ残りなのか……。
「やっぱ私は『オンナ』じゃないのか……」
「そう落ち込むな、妹よ。旺志から見たら、お前はババアだからなあ。いくら、部屋にお持ち帰りしたって、手は出さねえよ」
「はあ!?」
わたしは鏡にうつったお兄ちゃんを目で確認すると、目を吊り上げて振り返った。
「俺と茂美は同級生だったから、事故的なアレは衝動的にあったが……。お前と旺志じゃなあ、9歳差だろ? しかも女のほうが30過ぎじゃなあ…」
「事故的なアレって……茂美さんに失礼じゃない!」
「俺たちのは例えだろ、それに結婚したんだからいいんだよ。30過ぎの処女じゃあ、うっかり事故で済まされないだろ。十代二十代なら、『遊び』『その場の勢い』『流れ』で終わりにできることが、30代オトメじゃあ次を期待されるのは目に見えてっからな。重いだけだろ。よくある男の一人暮らしアルアルは、お前には通用しない……と頭の片隅においておけ」
「ちょ……」
「何もされなかったからって、しょげるなって言ってんだよ、俺は」
「なんで何もなかったってわかるのよ!」
何もされない前提話しているお兄ちゃんのほうが失礼だっての!
何かあったと思いこまれて、話されるのも嫌だけど……。
「何もなかったんだろ?」
「うるさいなあ~」
「旺志の容姿なら、女なんて選り取り見取りだろ。売れ残りババアをどうしても罠にかけてまで、寝取る必要なんてないしなあ……って」
「ひどっ……!! カワイイ妹を、売れ残りババアっていう!?」
「事実だろうが。てか、どの口が『かわいい妹』って言ってんだ? どこがカワイイんだ?ええ? どのへん?? 平凡人並平均なお顔なのに、化粧っ気もなくジーパンTシャツじゃあ、婚期を逃せば、男運も逃げてくっての~。そういう格好はな、結婚して子供産んでからでいいんだよ」
「さいってえぇ~~!!」
最低、最低、ちょー最低。
お兄ちゃんは、「ははは」と声高らかに笑い声をあげて、更衣室を出ていった。