恋愛温度差
―あかりside-
「チーズケーキとチョコケーキを一つずつ」
午後1時すぎ、君野くんがお店にきて、いつものように注文してきた。
「食べて……いくんですよね?」とわたしは、上目遣いで質問すると、君野くんがコクンと頷いた。
「あの……それって罰ゲームか何かですか?」
君野くんが、わたしの格好を指さして問う。
「い、い、え! 似合ってないのは重々承知の上で、修行だと思って着ております」
「修行!?」
君野くんが聞き返す言葉を耳にして、茂美さんが「あはは」と苦笑した。
「光があかりちゃんに酷いことを言ったらしいのよ。わざわざ更衣室にまで行って!! それであかりちゃん、『茂美さん、今日もキレイ系のワンピースとカーディガンを貸してください!』って」
「茂美さん、その解説いらないですから」
わたしがじろっと厨房のほうを睨み付ける。
ガラス越しに見える厨房では、お兄ちゃんがヘラヘラと笑っていた。
「もしかして、いまヒール履いてますか?」
「なにか、問題でも???」
ぎろりとわたしの眼球が動いて、君野くんに向く。
「あんなに痛がってたのに」
「い、いたがっ……痛がってません。今日は大丈夫な日なんです。我慢できるんです、いえ、するんです。あんな白い悪魔に、ヒールごときって言われたくないんで」
「大人しそうで従順そうに見えて、意外と負けず嫌いで、意地っ張りですよね」
「はい、チーズケーキとチョコケーキ、オーダー入りましたぁ~~」
君野くんの言葉にかぶさるように、わたしは大きな声で厨房にむかって声を出した。
「茂美さん、すぐ戻るんであそこのテーブルにケーキの用意お願いしていいですか?」と、君野くんが、わたしではなく茂美さんに声をかけた。
「え、ええ。いいですよ」
「ちょっと、買い物してきます。すみません。すぐ、戻りますから」
君野くんが、小走りで店を出ていくのを見送ってから、わたしは小さく息を吐き出した。
似合わないってわかってる。
ワンピースにカーディガン……それを、罰ゲームか何かですか……って。
悔しすぎる!
「あかりちゃん、足、真っ赤だよ??? もう脱いでもいいんじゃない? 足元はお客様から見られないし」
「イートインスペースで食べられるお客様から、運ぶときに足元は見られるから。絶対に脱がない。ヒールが履けなくて、女じゃねえって言ったのを撤回させるんだから」
ふんっと鼻を鳴らして、わたしはそっぽを向いた。
「チーズケーキとチョコケーキを一つずつ」
午後1時すぎ、君野くんがお店にきて、いつものように注文してきた。
「食べて……いくんですよね?」とわたしは、上目遣いで質問すると、君野くんがコクンと頷いた。
「あの……それって罰ゲームか何かですか?」
君野くんが、わたしの格好を指さして問う。
「い、い、え! 似合ってないのは重々承知の上で、修行だと思って着ております」
「修行!?」
君野くんが聞き返す言葉を耳にして、茂美さんが「あはは」と苦笑した。
「光があかりちゃんに酷いことを言ったらしいのよ。わざわざ更衣室にまで行って!! それであかりちゃん、『茂美さん、今日もキレイ系のワンピースとカーディガンを貸してください!』って」
「茂美さん、その解説いらないですから」
わたしがじろっと厨房のほうを睨み付ける。
ガラス越しに見える厨房では、お兄ちゃんがヘラヘラと笑っていた。
「もしかして、いまヒール履いてますか?」
「なにか、問題でも???」
ぎろりとわたしの眼球が動いて、君野くんに向く。
「あんなに痛がってたのに」
「い、いたがっ……痛がってません。今日は大丈夫な日なんです。我慢できるんです、いえ、するんです。あんな白い悪魔に、ヒールごときって言われたくないんで」
「大人しそうで従順そうに見えて、意外と負けず嫌いで、意地っ張りですよね」
「はい、チーズケーキとチョコケーキ、オーダー入りましたぁ~~」
君野くんの言葉にかぶさるように、わたしは大きな声で厨房にむかって声を出した。
「茂美さん、すぐ戻るんであそこのテーブルにケーキの用意お願いしていいですか?」と、君野くんが、わたしではなく茂美さんに声をかけた。
「え、ええ。いいですよ」
「ちょっと、買い物してきます。すみません。すぐ、戻りますから」
君野くんが、小走りで店を出ていくのを見送ってから、わたしは小さく息を吐き出した。
似合わないってわかってる。
ワンピースにカーディガン……それを、罰ゲームか何かですか……って。
悔しすぎる!
「あかりちゃん、足、真っ赤だよ??? もう脱いでもいいんじゃない? 足元はお客様から見られないし」
「イートインスペースで食べられるお客様から、運ぶときに足元は見られるから。絶対に脱がない。ヒールが履けなくて、女じゃねえって言ったのを撤回させるんだから」
ふんっと鼻を鳴らして、わたしはそっぽを向いた。