恋愛温度差
「お兄ちゃんにも、黒崎さんにも、わたしは『オンナじゃない』って思われてるんだよ? お兄ちゃんにいたっては、ジーパンTシャツ姿の化粧っ気なしで、婚期も男運も逃してるオンナだって言われた」
「それで、オーナーと光さんが勝手に描いてる『オンナ』像を実行してるって?」
「そ、そりゃ、わたしだって『オンナ』って思われたいし……」

 わたしは踵にバンドエイドをはりつけた。

「……てことはさ。俺は昨日、『オンナ』じゃない人を抱いたってことになるね」
「え!?」
「俺は、『オンナ』のあかりを抱いたはずなんだけど?」
「あ……えっと、その、だから」

 わたしは下を向くと、バンドエイドの箱を手に持ち、口ごもってしまった。

「旺志、昨日は悪かったな~。あいつが出した課題のためとはいえ……」
 お兄ちゃんが、厨房から出てきて、イートインスペースに入ってきた。

 君野くんの隣に立つと、わたしにむかって顎をくいっと動かして合図をおくってくる。
『どっかいけ』、と。

 わたしは、「どうぞ、ごゆっくり」と席をたった。

 ……あ。足、痛くない、かも。

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