恋愛温度差
「課題の内容を聞いても?」

「『出かけたことのない異性を食事に誘い、食事をすること』これが黒崎オーナーからの俺への課題です」

「『俺の』?って一人ひとり課題が違うんですか?」

「そうみたいです。その人に合った育てるべき個所の課題を出されているようです」

「はあ……」

 私は曖昧な返事をして、窓の外へと視線を動かした。

 納得いった。

 なぜ君野くんが私を誘いにきたのか。

 デートの誘いではなく、課題を消化するために来ただけ。

 ついでにケーキも食べられれば、ライバル店の偵察にもなるしね。

 私は2、3度ほど頭を上下させると、「わかりました」と答えた。

「はい?」と今度は君野くんが不思議そうな顔をする番になる。

「いいですよ。その課題、私でいいならお付き合いします。これから他の人を誘うのも大変でしょ?」

「はい、大変です」

 馬鹿正直に君野くんが返事をする。

 君野くんなら、すぐに他の女性を見つけられそうなのに。

「ごゆっくりどうぞ」と私は再度一礼してから、その場を立ち去った。






「はあっ!? 旺志とあかりがデートぉ?」

 夕食の席で、お兄ちゃんがご飯粒を飛ばしながら声をあげた。

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