絶望の部屋(再)
「ゆうやーこっち来いよー!!」
 
一也がこちらみてニコニコしながら手を振って僕を呼んできた。
 
 
誰が行くか。行けば恥ずかしい思いをするのは目に見えている。
僕に聞こえないのをいいことに一也はどうせ口からでまかせをぺちゃくちゃと話してくれているだろうから行きたくても恥ずかしくていけなかった。
 
 
僕は何か作業をしているふりをして一也の声が聞こえていない感じをよそおっておいた。
 
 
 
「ゆーやーー。どうせ聞こえてるんだろ?こっちこいよー。
 
早くしねぇと栞ちゃんが悲しむぞー。」
 
 
やめてくれ一也。
今それを言うのは雰囲気的に間違ってるよ。
仮にも殺し合いをしに来た奴らしかいないんだからせめてもう少し小さい声で言ってくれ。
 
 
僕は叫ぶ一也と周りの視線の痛さにしぶしぶ一也達のところに近づいた。
 
 
 
「一也。せめてもう少し小さな声で言ってくれよ。
 
 
誤解されたらどうするんだよほんと。」
 
 
「照れるなよ勇哉。
俺がお前のために人肌脱いでやってるんだからよ。」
 
それは自己満足だよ一也。
僕にとってその行動は僕のこの場所での居場所をなくしただけだよ。
 
涙すら出てこないよ。
 
 
「だから誤解だってほんとに。
 
いつ僕が好きって言ったんだよ。」
 
 
「そんこと言っちゃって。
ほらみろ栞ちゃんだってまんざらでもなさそうじゃないか。
 
顔は悪くないんだから自信もてよな勇哉。」
 
僕の背中を押して栞に近づけてきた。
 
ほんとお節介なやつだよ。
 
 
「あの…ごめんね一也が変なこと言って。」
 
「あっ、いえいえ。
 
冗談だってわかってますから大丈夫ですよ!」
 
 
彼女の笑顔をみて安心した。
何に安心したのかはわからないがただなんとなく嫌われなかったことに安心したんだと思う。
 
 
それを見て一也がニヤニヤとしていた意味が僕にはわからなかった
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