絶望の部屋(再)
「あ、あの、安藤さん大丈夫?
狭かったりきつかったら言ってね。」
僕は何か話して紛らわしたくて小声で栞に話しかけた。
 
 
 
「え、うん。大丈夫だよ!
 
心配してくれてありがとう。」
 
心配したなんてカッコイイもんじゃない。正直何も話してないと精神がこれ以上もたないと思ったから話しただけだった。
 
それに彼女と話していると妙に心が落ち着く。
それは彼女が希に似ているからなのかはわからないが見たことがある顔が近くにいるだけでなんだか妙に落ち着くことができた。
 
「よかった。
 
このまま誰ともあわなかったらいいのにね…。」
 
 
「そうだね。
 
新庄君は大丈夫なの?」
 
 
「僕は大丈夫だよ。
 
なにかあったら僕に任せてよ!これでも結構こうゆうのには自信があるんだ!」
 
 
なんの自信があるのか自分でもわからなかったけどただなんとなく自信がある気がした。
それは堂々と口に発することのできるようなものかどうかなんてわからなかったけど彼女といるとなぜかそんな自信が湧いてきた。
 
 
「ありがとう新庄君。
 
じゃあなにかあったらよろしくお願いします。」
 
そう言って彼女は僕に寄り添ってきた。
 
なんとも嬉しいシチュエーションだが、これが殺し合いの最中じゃない場合のことだ。
緊張から嬉しさも半減するほどだった。
 
 
ガサッと草を揺する音は突然横から聞こえてきた。
 
その音はこちらに少しずつ近づいてきた。
さっきまでの緩みきった表情と和んだ雰囲気は一瞬で凍りついた。
栞も怖がっているのか僕を握る手が小刻みに震えているのが感じとれた。
 
僕は栞から預かっていた銃を揺れる草むらの方に向けて構えた。
 
 
「なーんだ。あんた達か。
どこのバカがアホみたいに居場所教えるかのように喋ってるから罠かと思ったのにガッカリね。」
 
草をわけて出てきたのは眼鏡の女だった。
 
その聞き覚えのある声を聞いてなんだか緊張が全て吹き飛んだようだった。
 
「びびらすなよ。なんでこんなとこ歩いてるんだよ。」
 
 
「敵の陣地に進んでたはずなのにいつの間にか戻ってきてたみたいね。
 
 
ってゆうかあんたらこんな状況でよくベタベタできるわね気持ち悪い。」
 
 
相変わらず僕に対する態度は冷たかった。
なにを恨まれてるのかはわからないが妙に冷たい態度は少し残念気もした。
 
 
「ベタベタなんてしてないよ。
 
ただ男が女を守るなんて当然だろ?だから守ってるだけだよ。」
 
「ふーん。
 
まぁせいぜい頑張って生き残りなさい。
 
生き残ってたら少しは認めてあげるわ新庄君。」
 
 
そう言って眼鏡の女は颯爽と草むらの中に消えて敵の陣地に向かって行った。
 
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