絶望の部屋(再)
「ヤバイぞ勇哉。
 
逃げるしかねぇ。どっかの方向に一点に進んで1人だけ殺して逃げるんだ。」
 
 
 
わかったよ!僕はそう答えたつもりだった。
 
 
でもなぜかその声は出ることはなく喉の奥に止まっていた。
意識は薄れさっきまで良好だった視界が霧がビッシリ帯びたように見えてきて一也の顔も栞の顔も七海の顔も全く見えず声もなんだかだんだん聞こえずらくなってきたみたいだった。
 
 
「みんな逃げて。」
最後に力を振り絞り出た声はそれだった。
 
 
その言葉を発したのを最後に僕の視界は完全真っ暗になりその場に倒れこんでしまった。
 
 
強がりなんて言ってる余裕僕にはなかったんだやっぱり。
たぶんどこかであの2人も一也なりのことも信用していない僕がいたんだとその時思った。
弱さを見せることも出来ない仲間なんて仲間じゃないのにな。バカだな僕って。
 
 
みんなこんな僕を捨てて逃げててくれよ。
 
 
 
信じてるって言ったのに裏切るようなことをした一也にだけは最後に謝りたかったな…
 
 
今までこんな僕と友達で居てくれてありがとう。僕の分まで生きてくれよ。
 
 
例え聞こえなくったっていい。心の中で言ったことを一也ならわかってくれると思った。
 
 
それを最後に僕の記憶は途絶えてしまった。
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