絶望の部屋(再)
僕と一也は2人で栞と七海の部屋に向かった。
 
 
移動中は会話もなくなんだかお金の入ったバッグを握りながら震えているようにも見えた。
 
 
「大丈夫?」とか声をかけるのは簡単だけどその人の今の気持ちを考えることが1番大事だ。
一也の今の心境は強がっていたけどたぶん複雑な心境に陥っているに違いない。
 
 
もし僕が逆の立場で大丈夫でないのをわかっていて大丈夫と聞かれたらそれこそ心理的な面でそいつを信じれなくなってしまう。
 
 
一也との付き合いは結構長いから今の気持ちとかは表情や口調だけで大体は感じれるまでになれたのが僕らの友情の大きさともいえる。
 
 
コンコンコン。
 
 
一也が2人の部屋の扉をノックした。
 
 
「七海、栞いるか?」
 
 
なぜ名前呼びなのか気になるところだったがそこはあえて触れず聞き流した。
 
 
僕が寝ている間にでも仲良くなったんだろ…
そう思いたい。僕はまだ苗字でしか呼べないのに。
 
 
「え!!一也君?
 
ちょっと待ってね。すぐ用意するから。」
 
 
七海の飛び起きた音と焦った声が聞こえそこからドタバタと何かを片付けいるであろう音が聞こえ最後には栞を必死起こしている声が聞こえた。
 
 
それからしばらく静かになり最初に呼び出してから10分前後で2人は出てきた。
 
 
出てきた2人は髪も綺麗に整っており全く寝顔を感じさせない顔で清々しく出てきた。
 
 
「どうしたの2人してこんな時間に!?」
 
 
「いやちょっと見てほしいものがあったからさ。
 
 
ちょっとここじゃ出せないから部屋あがらしてもらっていいか?」
 
 
部屋にあがらしてと言う言葉を聞いた途端顔が青ざめまた「ちょっとだけ待っててね。」と言い残し部屋の中に入ってしまった。
 
 
2人の口論が聞こえたり急ぎすぎて転んだと思われる音が聞こえたりと大暴れして20分後に息を少しきらして額に汗をかいた七海が部屋から出てきて「散らかってるけどあがって。」と言ってきたのであがらしてもらった。
 
 
栞の方も平然とした顔をしているが少し疲れている感じがする。
 
片付けただけあって部屋は綺麗で甘い匂いがして僕らの部屋とは大違いだった。
だがこれは今さっき作り上げたものでたぶんさっきまでは僕らの部屋より酷かったんだろうな…
 
 
一也も流石に2人の慌てっぷりを見てようやく少しずつさっきまでの硬い表情はとけいつもの一也に戻ってきた。
 
 
「あの…一也君。私達に用があるってなんなの?」
 
 
「あぁ、そうだったな。」
 
 
そう言って一也はバッグの中のお金を2人に見せた。
2人もやはり僕らと同じくいいリアクション見せてくれた。
まぁ無理もない。見たことのないような札束だ。もし外で見つけていたら飛んで取りに行くぐらいだよ。
 
 
 
一也が2人に事情を説明し、みんなで分けて使うことになったと言うと最初は断ってきたが一也の意思の硬さに七海も折れみんなで使うことになった。
 
一也1人に責任を押し付けるのは違うということを2人もわかってくれたみたいでよかった。
 
 
「あのさ…このお金ってここの中でも使っていいんだよね?」
 
 
「たぶん大丈夫なはずだよ!」
 
七海が何にお金を使いたいのか全くわからなかったがここで得たお金をここで使えないわけはないはずだからたぶん大丈夫と言った。
 
 
「じゃあさ…明日ここの敷地にあるこの遊園地行ってみない?」
 
え?
 
遊園地?
 
 
「遊園地ってあの遊園地?」
 
 
「そうよ。ここの敷地には色々と遊ぶ場所もあるのよ。
 
 
だからよかったら2…4人で一緒に行ってみない?」
 
 
一瞬漏れかかった本音は触れない方がいい気がしたから触れるのはやめておいた。
 
 
悩む僕に対し一也はアッサリと許可してしまった。
 
 
「もちろん勇哉もくるだろ?」
 
 
「え、え。まぁ一也が行くなら…」
 
 
強引な一也の誘いを断ることも出来ずに行くことになってしまった。
 
 
「決まりね!
 
じゃあ明日の8時にまたここに集合ね。」
 
 
七海がそうゆうと一也もそれに同意し部屋を出てしまった。
僕と同じく栞はなすがまま。七海の強引な誘いを断ることが出来ずに半強制的に参加することになった。
栞は話の間おどおどしているだけで一切口を聞くことがなかった。
 
 
その様子に自分もあんな感じなのかと思うとなんだか少し自分情けなかった。
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