絶望の部屋(再)
5分ほどかかったが思ったより早くお城の下に着いた。
 
 
呑気に2人は自分達の場所を教えるかのように手を振っていた。
 
 
「2人とも急いで一也が…。」
 
 
「「えっ…!」」
 
 
僕のただならぬ様子を察して七海の顔色は青ざめ泣きそうになっていた。
 
 
「なんで一也のこと置いてきたのよ。
 
あんたが一緒に戦えば…。」
 
僕の胸を叩いて泣き出した七海に僕は言い返す言葉がなかった。
 
 
僕はただあの鬼から逃げたかっただけなのかもしれない。
 
 
自分が怖い。無意識に親友を捨てたのか?
違う。違う。違う。違う。
そう信じたい。
またあの頃に戻りたくない。
また1人になりたくない。
 
 
「まだ一也君が死んだわけじゃないんだから早く行こ。こうやって私達がもめててもなんの解決にもならないでしょ?」
 
 
栞の声でハッとしたように僕と七海は走り出した。
 
 
一也生きててくれ。
 
 
 
来た道を急いで戻りさっきの場所に着いた。
 
 
窓から覗くと一也は黒鬼に対して全く引けを取らずにまだ戦っていた。
 
 
「一也!!今行くから待ってて。」
 
 
「遅かったな!
 
 
早くかたずけちゃおうぜ。」
 
 
 
「そうだね。」
 
 
そう言って窓をくぐろうとした時一也の後ろに何かが居るような気がした。
 
 
一也は目の前の黒鬼に集中して全く気づいてないみたいだ。
 
 
「一也…。後ろ!!」
 
 
そう言った時一也はハッと後ろを向いて姿を消せる鬼の攻撃をかわし素早く攻撃があった方に銃口を向け撃った。
 
 
弾は命中し姿が見え倒れる鬼を見てホッとしたのは一瞬だけだった。
 
 
 
グサッ。
 
 
 
時間が止まってるように見えた。
その光景はあまりに突然で僕の頭では理解できなかった。
 
 
 
ポタポタっ。
 
 
 
落ちていく血がスローに見えていた。
 
 
横で七海が崩れるように倒れ、栞は口を手でおさえ膠着していた。
 
 
僕もその光景をただくぐりかけた窓に足をかけた状態で呆然と見ることしかできなかった。
 
 
「ガハッ。
 
いってぇな…。こりゃもうダメだな。ははは。
 
ほんとに言った通りになりやがったぜ…」
 
 
そう言って自分の腹に刺さる爪を見て笑っていた。
 
 
それをあざ笑うように黒鬼が一也を見ていた。
 
 
 
「か、か、一也…。
 
 
今行くから待ってて。まだ…まだ大丈夫だよ。そのぐらいの傷僕が塞ぐよだから待ってて。」
 
 
窓から飛び出し一也の方に向かおうとしたがパニックなっていたのか足がゆうことをきかずこけて床をはっていた。
 
 
なにやってんだよ早く早く一也を助けないと…。
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