あのね、先生。

「茉央ちゃんのせいじゃないよ、ただ忙しかったから断ろうと思ってただけ」

むしろ会いたかった。

忙しかったっていうのは嘘だけど、そうでも言わないと茉央ちゃんは気にしてしまうだろうから。


「シャワー浴びてきなよ」

「え…でも、服ないから…」

「あ、そっか…」

遠慮がちに部屋の中に入ってきて、床が濡れるのを気にしてか、玄関から一歩も動かない。

「…俺のでよかったら貸すけど」

「えっ、いや、でも…」

「俺の、いや?」

知ってるよ、茉央ちゃんが照れ屋だってことは。変わってないね、全然。

久しぶりだからなのか、場所が俺の家だからなのかは分からないけど、茉央ちゃんの緊張は聞かなくても伝わってくる。
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