あのね、先生。

確かに先生は半ば強引にあたしをあの場所から連れ出したけど、抵抗らしい抵抗をしなかったのはあたしだ。

だって、ずっと会いたかった。

絶対に口には出せなかったけど、先生の顔を見たかった。声が聞きたかった。


…だけど、素直にそう言えないのは優真の存在があるから。

優真は何も悪くない。

ずっとあたしを大事にしてくれてたのは優真だし、あたしだってちゃんと優真のことを好きになった。

…ただ、一番じゃなかった。


「…先生、あたしもう少ししたら帰るね」


あの人に辛い思いなんてさせられない。

あたしが辛い時一番傍にいてくれたのは優真であって、先生じゃない。

そう考えるとやっぱり、あたしがしてることは″間違い″だから。
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