あのね、先生。
「…そうだよ」
先生はズルい。
あのときだってそうだった。
一方的に別れを告げておいて、そのくせスターチスなんて残して。
そんなことされたら、あたしの記憶からは絶対に消えないじゃない。
「…だけど、やっぱりダメだった」
消えないものを残したのは先生。
「俺もうこの手を離したくない。」
…こうなることがどこかで分かっていたのについてきたのは、あたし。
「嫌なら今すぐ振り払って、そしたらもう二度と茉央ちゃんと関わらないから」
…ほんとにズルい。
二度と?
今この手を振り払ったら、あたしはもう二度とこの手に触れられない。ずっとこの人を想いながら、別の人と過ごすんだ。