あのね、先生。

「あの…」

高橋が何か言いかけたけど、それは大きな声で俺の名前を呼ぶ白城によってかき消された。

「加地!」

手を振る白城の横には男の人がいて。

近づくにつれて分かったその人に、俺は何も言えなかった。


「おー、加地もいんのか。久しぶり」

久しぶり、なんてのんきに言って笑うその人は、多分茉央も会いたかった人。

「…久しぶりっすね、中村先生」

そういえば白城が来てくれるって約束するまで、何回でも誘いに行くって言ってたっけ。

…でも俺が気になってるのはそんなことじゃなくて。


「…先生、1人で来たんですか?」

もしかしたら、あんたと一緒に来たかもしれない人のことなんだ。
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