あのね、先生。
取り出してみると、画面に表示されたのは【咲良 茉央】の文字。
かかってこないと思っていた相手からの電話だったから驚いて、何も考えずに通話をタップしてしまった。
「あ…、もしもし」
学校で、しかも生徒の前で。
一応携帯は禁止だとか言ってる側の教師が、咄嗟に電話に出てしまった。
『…先生…?』
「…うん、どうしたの?」
俺は変えてるつもりなんてなかったけど、女子生徒には俺の態度が変わってるように感じたんだろう。
「蓮くん電話出ちゃったよ!」
「絶対彼女だよね!声優しいもん!」
「いやーっ、蓮くんに彼女なんて信じたくない!」
大きなその声は、電話の向こうの茉央ちゃんにも届いたらしい。
『…今学校?ごめんね、何かすごい…』
「ううん、大丈夫。こっちこそごめんね」