あのね、先生。
「先生大事な話があるから、いい子はそろそろ帰りなさい」
「えー、彼女さんの声聞きたいー」
「だーめ。ほら、早く帰りな」
俺のその言葉で諦めたのか、少し近寄ってきて大きな声で「彼女さんまたねー!」と言って帰っていった。
『んふふ、先生ほんとに人気者だね。女の子にモテモテ』
電話越しに聞こえる茉央ちゃんの声が、心なしか暗く聞こえる。
「…何かあった?」
美術室に入りながらそう聞けば、茉央ちゃんは少しの間黙ってしまった。
茉央ちゃんから電話をかけてくるなんてほんとに珍しいし、少し元気がないのも気になる。
すぐにでも会いに行ってあげたいけど、そうもいかない。
『先生の声が聞きたくなったの』