あのね、先生。

前先生の家に行ったとき、もうとっくに言い訳できないところまでいってしまった。戻れないところまで。

ただ話をしただけだという言い訳は、もう嘘になってしまう。

キスなんて、立派な浮気だもん。

…絶対に、言えない。


…ただ、先生とのたった一度だけのキスが忘れられない。


初めてだったわけじゃない。あたしのファーストキスは優真だから。

だけど、何度もした優真とのキスよりも、先生との一度だけのキスがずっと頭を離れない。

そんなのダメだって、ずっと無理に忘れようとしたけど、どう頑張っても消えないまま残ってる。

唇の感触も暖かさも、手首を掴む力強い手も、目を閉じた綺麗な顔も。

…そのときの気持ちも。

多分ずっと忘れない。
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