あのね、先生。


外が暗くなってきて、オレンジジュースもなくなってしまった頃。

カフェだったこの店は小洒落たレストランのような雰囲気に変わっていた。

メニューも照明も変わって、最初からレストランだったみたいに。


何も頼まないのにいるのも悪いな、と思って出ようとしていたときだった。

ドアが開いて、あたしが待っていた彼が少し息を切らして入ってくる。

「先生」

「ごめん、遅くなって」

「ううん、大丈夫」

やっぱり先生はここに来てるみたいで、注文を取ってくれた男の人と少しだけ話をするとこっちに歩いてきた。


「行こっか」

「え、先生お金…」

「うん、大丈夫」

大丈夫?あたしはオレンジジュースのお金を払ってないのに、先生はあたしな手を引いて店を出た。
< 139 / 328 >

この作品をシェア

pagetop