あのね、先生。

「俺よく来るの、ここ。次来た時に払っとくから大丈夫だよ」

やっぱり来るんだ。

…じゃなくて

「ダメ、あたし払うよ」

「んふふ、いいから、待たせたお礼ってことにしてよ」

「でも…」

「あ、じゃあさ、ご飯作ってよ」

手を引く先生が、振り返ってふにゃんと笑った。ご飯作ってよ、って。


「あたしが?」

「うん、茉央ちゃんが」

「…下手だけどいい?」

「茉央ちゃんが作ったものなら俺何でも食べれる自信あるね」

そう自信満々に言ってのける先生がおかしくて笑うと、先生も笑う。

何か普通のカップルみたいだなって、錯覚してしまうような雰囲気に呑まれそうになる。

…ダメなのに。
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