あのね、先生。
見つけた痕
あの日から様子がおかしい茉央に、今だに何も聞けないままだった。
ただ、蓮くんが関わってるってことは何となく分かって。
「茉央?」
「…ん?」
「これ、見たかったんじゃねぇの?」
「うん…何で?」
俺の部屋に2人きりでいるはずなのに、いないはずの蓮くんの存在を感じるのは何でだろう。
借りてきたDVDは茉央が選んだものなのに、見てるようで見てない。
上の空って言葉がよく当てはまるような茉央の態度に、不安が増していくのは気のせいじゃない。
「…いや、何でもない」
俺の部屋に来てから、ってわけじゃない。
あれからずっと茉央は俺じゃないだれかを思い出してるんだ。
…俺、そんなに鈍感じゃねぇぞ。