あのね、先生。
「明日、どっか行く?」
気付いていながら聞けないのは、そうだと認められるのが嫌だから。
多分茉央は俺が聞かないかぎり自分から何があったかなんて話さない。
…それが一番俺を傷つけるって分かってるから、言わないんだ。
「…そうだね、どこ行こっか」
「茉央が行きたいとこでいいよ」
「んふふ、考えとくね」
…傍にいてくれんなら、いいよ。
少しくらい別の男を想ってても。
…一度は出来たんだ。もう一度俺に気持ちを向けることだって、出来るよな?
「こっち向いて」
そう言うと茉央は素直に俺の方を向いて。だから逃げられないように両手で頬を包むと、驚いたように俺を見つめる。
「な、に…?」