あのね、先生。

でも、気づかないフリするから。

隠したいなら、何も言わない。

俺からは何も聞かない。

…そしたら、離れないだろ?

「俺がずっと傍にいるから」


抱きしめた身体をそっとベットに倒すと、涙を溜めた目が俺を見た。

…そんな顔、すんなよ。

頼むから。そんな辛そうな顔すんな。

「…ゆ、ま…」

気付かないフリするから。俺が見抜けないように、演技すればいい。

「…ずっと、好きでいるから」

下手くそでもいいよ。

それでも騙されてやるから。

…だってそれくらい、離れることに比べればどうってことないんだ。

大切だって思ったのは付き合い始めてからとかじゃない。

もっとずっと前から。
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