あのね、先生。

――――――
―――――――…

ここに来たのは卒業式の日以来。

それも、1人で来るとは思ってなかった。

部活をする生徒の声が聞こえてくる中、俺は迷うことなくある場所に向かった。


半年しか通わなかったここの中でも、特に思い出深い場所に。

そこには多分、俺が会いに来たあの人が1人でいるはず。だって今日は木曜だ。

あの場所に行く生徒はいないはずだし、部活も休みだから。


…俺が来ることなんて想定してんだろ?

だって、多分わざとだ。

わざと茉央が気づかない場所にあんな痕を残して、俺だけが気づくように。

…最悪じゃん。

分かってるよ。あんた賢いからさ、あれを見て俺がどうするかなんて別に考えなくても分かったんだよな。

ドアの前につくと、やっぱり中から人の声は聞こえない。
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