あのね、先生。

先生、なんて言って少し誤魔化したのは、多分俺が見ず知らずの他人ってわけじゃないからだろう。

半年でも担当した、元生徒だから。

分かってんだよ。俺が何も言えなくなるくらい強く言ってこないのは、蓮くんにとって俺が他人じゃないから。


「…蓮くん、俺のだよ。茉央は」

だけど、相手が蓮くんだとか俺には関係ない。俺そんなに優しくないから。

「それに、他に相手がいんじゃねぇの?」

遠慮なんてしない。

「…何言ってんの」

「吉野先生、だっけ?ここの保健医。前に噂になったじゃん」

蓮くん、俺に遠慮なんてしてる場合じゃないんじゃない?

俺そんなに簡単じゃないからさ。

「は…、蓮くん分かりやすいなー」
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