あのね、先生。
敵に回しちゃダメな人だった。
多分すげー賢くて、保健医なんてしてるくらいだから人の気持ちを見抜くなんてことには慣れてる。
何だっけ。カウンセリング?
毎週やってるって聞いたことあるわ。
そんな人の前で咄嗟についた嘘なんて、見破られるに決まってんじゃん。
「…吉野先生、俺にどうしてほしいんですか?」
隠すのは無理だ。
この人にそれは通用しない。
だったらどうするかなんて、迷うほど選択肢はない。むしろ、選ばなきゃならないのは一つ。
「私と付き合ってください。」
この人の手が茉央ちゃんに届くことを防げばいい。それだけは絶対に。
茉央ちゃんが傷つかない方法で。
「…すいません。それは出来ないです」