あのね、先生。
シロ side
大学生になって分かったこと。
…ていうか、改めて実感したこと。
相手を想っての優しい嘘が、相手を傷つけることもあるってこと。
「これでよかったのかなー」
「何が?」
「いや、何か時々思うんだけどさ。もしあの時本当のこと話してたら、今どうなってんだろうなって」
「…どうしたの?急に、変なの」
隣を歩く高橋が俯いて言う。
「急にっていうか、俺はあのときからずっと考えてたけど」
蓮くんに頼まれたあの日から、咲良に本当のことを言ってしまおうかって何度考えただろう。
実際にそれを出来なかったのは、加地の存在があったから。
多分加地なら咲良のこと大事にしてくれるだろうなって思ったし、気持ちを知ってる以上簡単にそんなこと出来なかった。