あのね、先生。

どうしても茉央ちゃんじゃなきゃダメだ。

それは目の前にいる吉野先生と同じ感情で、ただ違うのは相手が受け入れるか拒否するかってこと。

「俺じゃなきゃダメですか?」

俺がどうしても受け入れられないから。

そこが俺と違うところ。


「篠原先生がいいんです」

さらに距離を縮めた吉野先生は、俺に触れようと手を伸ばした。

やめときなよ、俺なんて。

だって俺、別の女の人のことを考えながら吉野先生に話しかけてたんだよ。

吉野先生と話してても、考えてたのはずっと茉央ちゃんのことだったんだよ。


「篠原先生、抱いてください」

甘ったるい声が聞こえて、手が俺の首元に回ろうとした時だった。

コンコン、とドアをノックする音が聞こえて、吉野先生は俺から離れる。
< 174 / 328 >

この作品をシェア

pagetop