あのね、先生。

俺が返事をする前にドアノブが回って、ドアが開いていく。

「篠原先生、夏休みの課題のことなんですけどー……え?」

プリントを片手に中に入ってきたのは、暑そうに団扇で扇ぐ中村先生。

「あ…っと、吉野先生来てたんすか」

少し気まずそうに笑った中村先生は、俺をチラッと見て苦笑い。


「俺の話、後の方がいいですか?」

「もう終わったんで大丈夫です」

俺がそう言うと、吉野先生は振り返って「篠原先生」と俺を呼ぶ。

これ以上この人と2人で話すのは、何かやばい気がする。

「じゃあ、すいません吉野先生。長くなるんで保健室戻ってください」

中村先生も何かを察したらしい。

俺の味方をするように、笑顔で吉野先生に出て行くように促した。


「…また、来ます」

そんな言葉を残して、出て行った。
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