あのね、先生。
木の影のおかげで少し涼しいベンチ。
優真よりも先について待ってると、遠くからだけど優真が歩いてくるのが見えた。
…ごめんね。
辛いとき、ふと思い出すのは先生のふにゃんとした笑顔だった。
それは、今も前も変わらない。
だからって優真のことが好きじゃなかったのかって聞かれると、それは違うとちゃんと言い切れる。
あたしにとってちゃんと大事な人で、ちゃんと好きになった人だから。
「茉央」
…ただ、一番じゃなかった。
「…ごめんね、急に」
「ん、いいけど」
隣に座った優真は、手に持ってたオレンジジュースを黙って手渡した。
「ありがと…」
優真があたしを見つめる目が、すごく優しくて。まだ何も言ってないのに涙が出そうだった。