あのね、先生。

木の影のおかげで少し涼しいベンチ。

優真よりも先について待ってると、遠くからだけど優真が歩いてくるのが見えた。

…ごめんね。

辛いとき、ふと思い出すのは先生のふにゃんとした笑顔だった。

それは、今も前も変わらない。

だからって優真のことが好きじゃなかったのかって聞かれると、それは違うとちゃんと言い切れる。

あたしにとってちゃんと大事な人で、ちゃんと好きになった人だから。


「茉央」

…ただ、一番じゃなかった。

「…ごめんね、急に」

「ん、いいけど」

隣に座った優真は、手に持ってたオレンジジュースを黙って手渡した。

「ありがと…」

優真があたしを見つめる目が、すごく優しくて。まだ何も言ってないのに涙が出そうだった。
< 224 / 328 >

この作品をシェア

pagetop