あのね、先生。
「あたしが悪いの、大丈夫だから」
「でも…っ、血が…!」
頭をぶつけたんだろう。
傷口は見えないけど、確かに茉央の額からは血が流れていた。
「かすり傷だよ、ほんとに大丈夫だから」
「でも…っ」
「心配しないで、ほんとにあなたのせいじゃないから…ね?」
慌てる女子高生を落ち着かせようと、痛いはずなのに笑顔を見せた。
どこか懐かしいと感じたのは、この子の制服が1年くらい前まで茉央が来てたものと同じだからだろう。
「…茉央、病院行くぞ」
「ほんとに大丈夫だよ」
よく見ると怪我は額だけじゃなく、腕や足にもある。額からの血がポタポタと服に垂れた。
「いいから、行くぞ。」
茉央の手を強引に引っ張って、タクシーを停める。茉央をそれに押し込んで、女子高生に帰るように言った。