あのね、先生。

「…ごめんね」

さっきも謝ったのに、茉央は俺の後ろを歩きながらもう一度謝った。

それ、何に対して謝ってんの?

…そう聞けないのは、何となく茉央の答えが分かってるからだ。


「俺こそ、ごめん」

「…優真は何も…」

「守れる距離にいたのに、守ってやれなかった。それに…」

手、振り払ってごめん。

俺、茉央のこと嫌いになったわけじゃないから。ちゃんと好きだから。

「よそ見してたの、あたしなんだよ…?あたしの不注意でこうなったの」

立ち止まって振り返ると、茉央は不安気な目で俺を見つめる。


「…すぐ、治るよ、こんなの」

「傷、残るかもよ」

「…平気だよ。ほら、前髪下ろせばそんなに見えないし」

最低かもしれないけど、傷が残ってしまえばいいと思った。
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