あのね、先生。
残るキズと出れない電話
額のキズはたまにズキズキと痛んで、足や腕のキズは動くだけで傷口がじんわりと痛んだ。
だけどこれは自業自得だ。
周りをきちんと見ていなかったあたしの責任。ぶつかっていったのは、あたしの方だったもん。
…それなのに優真は、あたしが病院に行くときは必ず付いてきてくれる。
優真とのことがまだちゃんと終わってないのに先生に会うことなんて出来なくて。
今も鳴ってる、電話には出れない。
【篠原 蓮】
そう表示された画面を、何度もタップしかけてとどまった。
ちゃんと自分で話すから待っててほしい。そう言ったのはあたしなのに、あれからもう随分と時間が経った。
高校はもう夏休み終わったのかな。
…ごめんね、先生。
優真のあんな顔を見るとあたし、やっぱり突き放すことなんて出来なかった。
もう少し待ってほしいと言った優真に、頷く以外出来なかった。