あのね、先生。
声が聞きたいだけ
茉央ちゃんからの電話があったのはたしか、うちの学校はまだ夏休みだった時で。
それが随分前のような気がした。
だってもう夏休みは終わった。
自分の口から言うから、もう少し待っててほしい。終わったら自分から連絡する。
茉央ちゃんはあの時たしかにそう言った。だから俺はずっと茉央ちゃんからの連絡を待ってるのに。
あれから茉央ちゃんは一度も連絡してこない。それどころか、俺からの電話にも出なくなった。
「…うわ、蓮が先にいる」
入ってくるなりそう言って俺の前に座ったユータは、珍しいものを見るような目で俺をジッと見る。
「何だよそれー、俺がいつも遅れてくるみたいじゃん」
「お前いつも遅れて来るだろ」
「そうだっけ?」
たしかにユータと会うときは何か気が緩んで、気づけばいつも時間を過ぎた頃に来てたっけ。