あのね、先生。

「まぁ、茉央ちゃんが電話に出れない理由は俺も気になるし」

茉央ちゃんは恥ずかしがって自分から電話をかけてこないけど、俺からの電話にはちゃんと出た。

出てないことがあっても、ちゃんとその日のうちに掛け直してきたし。

だから、今俺の声を聞きたくないのか、俺と話したくないのかのどっちかだと思うんだよね。

「声が聞ければいいんだよな?」

「声が聞けなくても、元気にしてんならそれでいいよ」

「…そ、分かった」


俺と話したくないなら、無理に声を聞かせてなんて言わないから。

ただ、元気だってことが分かれば今はもうそれだけでいいよ。

「また連絡する」

「うん、ありがと」

俺の声を聞きたくないだけって方が良かった。そっちの方がずっと、良かった。

だけどその数日後、ユータから届いたメールには「今日、総合病院に行ってみろ」なんて、一番望んでないことが書いてあった。
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